

草もちなどの材料にも使うヨモギは、9月の終わりごろに、米つぶぐらいの大きさの花が茎に並んで咲きます。写真は花が咲いたヨモギです。
さて、実はこの写真の中にはイモムシがかくれています。赤丸の中の、茎の上側に体を曲げたイモムシがいるのがわかりますか?
このイモムシは、ハイイロセダカモクメというガの幼虫で、ヨモギの花が咲くころに現れ、ヨモギの花を食べて成長していきます。簡単に見つけることができないのは、敵に見つかりにくいよう、体の色や模様をヨモギの花が咲く様子に似せているからです。実に見事な化けっぷりだと思いませんか?
この幼虫のモノマネのすごさはこれだけではありません。ヨモギの花がまだつぼみのころは、幼虫も体がまだ小さく、体の色や模様はつぼみにそっくりなのです(写真右上)。ヨモギの花が成熟していくのに合わせて体の模様をかえていくという徹底ぶりです。
さて、これだけのモノマネ名人ですから、探しても簡単に見つかるものではありません。見つけたい人は、ヨモギの花が咲くころ、ヨモギの先の方を一本一本確かめながら根気強く探していくのがよいでしょう。
2022年9月14日(水) 十勝毎日新聞掲載(タチモリ)
クルミの木の葉がボロボロになっているのを見つけました。ボロボロになった葉の上をよく見ると、黒い甲虫と、茶色いイモムシのような虫がいます。これらの虫が大量にいて、葉を食べたようです。また、葉の裏にぶら下がる、黒い干からびた虫のようなものも見えます。
これらは全てクルミハムシという昆虫です。黒い甲虫がクルミハムシの成虫、イモムシのように見えるのが幼虫で、ぶら下がっているのがさなぎです。
クルミハムシは、葉を食べる昆虫であるハムシの仲間です。成虫も幼虫も葉を食べて育ちます。ハムシの仲間は決まった植物しか食べない種類が多く、クルミハムシもクルミの葉しか食べません。
クルミハムシが葉を食べつくすくらいに大量発生するわけは、産卵前のクルミハムシのメスを見るとわかります(写真右上)。お腹が体の何倍もの大きさにふくらむくらいの卵を抱えたメスは、1匹で大量の卵を生みます。大量の卵から幼虫がいっせいに出てくることで、天敵におそわれても一部は生き残れるようにしているのです。しかし葉を食べられるクルミの木にとっては、たまったものじゃないかもしれませんね。
7月13日(水)十勝毎日新聞掲載(サトウ)
木の葉っぱが次々と出そろう初夏。なかでもひときわ大きい葉が、ホオノキです。葉の長さは30cmほどにもなり、日本では最大級の葉っぱです!
ホオノキは、もともと山に生育する木で、6月ごろあざやかな白い花を咲(さ)かせます。身近な場所でも、公園にみられたり、帯広では街路樹として植えられています。
ホオノキの大きな葉は、昔から各地で料理などに利用されてきました。岐阜県(ぎふけん)では、5月5日の子どもの日に食べるおもちを、ホオノキの葉で包む習慣があります。また、ホオノキの葉で味噌(みそ)を包んで焼き、独特な香りをつけるホオ葉味噌も有名です。
魅力(みりょく)いっぱいのホオノキの葉は、いろいろな遊び方でも楽しむことができます。お皿代わりに使うのはもちろん、葉に穴を開けたりおったりすれば、おもしろいお面ができます。さらに、葉を写真のように切りとれば、ホオノキの葉のひこうきが完成です。だれが一番遠くに飛ばせるでしょうか。
ホオノキの葉は、夏だけでなく、秋の落ち葉でも遊ぶことができます。森や公園でひときわビッグな葉を見つけたら、ホオノキのことを思い出して手にとってみてください。
2022年6月22日(水)十勝毎日新聞掲載(ミヤザキ)
