

木々が葉を落として風景がさびしくなる中、ナナカマドという木が赤い実をつけて目立っています。あざやかな実は冬まで残り、並木としても人気があります。
目立つ実をつける植物には、鳥などに実を食べてもらって、中に入っているタネを遠くまで運ばせるという作戦があります。そのために目立つ色と、鳥へのごほうびとなる甘い果肉がついた実をつけます。例えば、サクランボやブドウなどはその仲間です。
ですが、ナナカマドの実を秋に味わってみるとかたくて苦く、甘みはありません。鳥にとってもおいしくないようで、ほかの木々の実がどんどん食べられてなくなっていっても、最後まで残っています。鳥にはどうやら不人気のようです。
ナナカマドの実は、寒さにさらされると、そのうちにだんだんと苦みがぬけ、真冬を迎えるころには、秋に比べるといくらか食べやすくなります。そのころには、ほかの植物の実はほとんどなくなっていることもあり、ようやくナナカマドにもたくさんの鳥がやってきます。
最後には食べられるからよいということなのか?それとも、わざとまずくしている理由があるのか?美しい色と苦みにかくされたなぞです。
2017年11月6日 十勝毎日新聞掲載(タチモリ)
大きなガを見つけました。北海道では最も大型になるガの一つ、クスサンです。開いた羽の大きさは、大きいものでは10cm以上になることも。体が大きいせいで飛ぶのはあまり上手くないのか簡単に捕まえられました。
観察していると下の羽にある目玉のようなもようを見せていかくしてきました。これは鳥などにおそわれたとき、おどろかせて食べられないようにするための行動と言われています。
クスサンの幼虫は7月頃にまゆを作ってさなぎになり、9月頃にまゆから出て羽化します。このまゆは、あみ目のように穴だらけの不思議な形をしていて、その形からスカシダワラ(透かし俵)とも言われます。幼虫がまゆを作るために出す糸はとても丈夫で、昔はこの糸から釣り糸(テグス)を作っていたそうです。
そんな丈夫な糸で作られるまゆは、成虫が羽化した後も木の枝に付いたまま残っているのがよく見られます。これから冬になって木の葉が落ちると、まゆも見つけやすくなるので探してみてはどうでしょうか。
2017年10月16日 十勝毎日新聞掲載(サトウ)
植物は実やタネをつける季節です。植物はみずから動くことができないので、タネをできるだけ遠くに移動させて仲間を増やすための工夫をしています。
タンポポはタネに綿毛(わたげ)をつけて風に飛ばし、カタバミは実がパチンとはじけてタネをはじき飛ばします。
じつは、みなさんもタネを運ぶ役目をしていることを知っていますか。草むらから遊んで帰ってくると、ズボンに「ひっつき虫」がついて、とるのが大変だったことがあるでしょう。ひっつき虫は服や動物の毛などにつく草の実で、遠くまでタネを運ぶためにいろいろな方法でくっつきます。
黄色い花が咲(さ)くキンミズヒキは、実がイソギンチャクのような形で、先がくるんと曲がったトゲで服にひっかかります。畑に多いアメリカセンダングサは、実にトゲのようなかたい毛をもち、服に刺(さ)さってくっつきます。道ばたに生えるオオバコの実は、雨でぬれるとネバネバするので、靴(くつ)のうらにくっついて人の移動とともに運ばれていきます。
服についてやっかいなひっつき虫ですが、植物が生き残るためのたくましいワザを虫めがねなどでじっくり観察してみてください。
2017年9月4日 十勝毎日新聞掲載(ミヤザキ)
