

川上を目指して セッケイカワゲラ 2022年3月24日
川の近くで、雪の上を歩く1cmくらいの黒い小さな虫を見つけました。これはクロカワゲラという昆虫の仲間で、雪の上を歩く姿からセッケイカワゲラとも呼ばれます。セッケイという呼び名は、山や谷に部分的に残った雪のことを言う雪渓(せっけい)から来ています。
昆虫なのに冷たい雪の上を歩いて大丈夫なのかと思ってしまいますが、セッケイカワゲラは他の昆虫と違い、寒いほうが好きなようです。特に0℃前後の気温が活動しやすいため、3月頃によく見られます。
セッケイカワゲラが雪の上を歩くのは、雪にいる微生物などを食べるためですが、実は他にも大きな目的があります。それは産卵のために川上(川の上流の方)に行くことです。セッケイカワゲラの幼虫は川の中で生活しますが、その間に下流の方に流されてしまいます。そのままだとセッケイカワゲラのすみかは、だんだんと川の下流に移動してしまうので、成虫は川上まで行ってから産卵する必要があるのです。
セッケイカワゲラは太陽の光などから川上の方向がわかるそうです。川上を目指した長い旅、見つけたらそっと見守ってあげてください。
2022年3月16日 十勝毎日新聞掲載(サトウ)
