木々の葉が色づく秋を迎えました。紅葉(黄葉)の楽しみは、何といっても見て楽しむいろどりの美しさですが、今回は目ではなく鼻で感じる「香り」の楽しみをご紹介します。
山の沢ぞいなどに育つカツラという木は、ハートの形をした葉が特徴で、秋になると葉が黄色く色づきます。見ためにも美しいカツラの黄葉ですが、魅力はほかにもあります。それは、葉が黄色く色づいたころにただよう、まるで綿菓子のような甘い香りです。葉が緑色のころにも、かすかに感じられることはあるのですが、黄葉のころに最も香りが強くなります。
でも、不思議なことに香りをよくかごうと葉に鼻を近づけてもほとんど香りはしません。どうやら一枚一枚の葉が放つ香りはほんのわずかなもののようです。香りを楽しむコツは、カツラの木のまわりをゆっくり歩いて、香りが集まっている場所を探すことです。風が吹くと香りは吹き飛ばされてしまうので、香りを感じるには、雨上がりなどで空気がしっとりと重たく、風がない日がおすすめです。
カツラは公園などにもよく植えられていますので、ハート形の葉と香りをたよりに探してみてください。
十勝毎日新聞2019年9月掲載(タチモリ)