夕方、キタキツネの鳴き声を耳にしました。こちらからキツネの姿は見えませんが、キツネからは私が見えていたのかもしれません。子ギツネが巣穴の外にでて活動を始める夏、親ギツネもいつも以上に周りを警戒(けいかい)しているようです。
キツネの鳴き声というと、童ようや物語でよく使われている「コンコン」を思い浮かべる人が多いと思います。「コン」と表現するのは日本だけで、使われ始めたのは平安時代とのこと。求愛や親が子を呼ぶ時の「ケーン」という声からきているのでは、という説があります。アイヌ語では「パウパウ」と表現され、英語にはキツネの鳴き声を表現する決まった言葉は見当たりません。
昨年大流行したキツネダンスの楽曲では、「キツネはなんて鳴く?」という歌詞とともに、様々なキツネの鳴きまねが歌になっています。私が実際に聞いた鳴き声は「コン」とは聞こえず、「ギャン」のような威嚇(いかく)の声です。夜道で聞くとびっくりする、少し不気味にも聞こえるキツネの鳴き声。夏の夜、部屋の外から聞きなれない鳴き声が聞こえたら、声の主はキツネかもしれません。
十勝毎日新聞2023年8月掲載(オオイシ)