サクラとアリの関係

サクラが蜜(みつ)を出すところといえば、多くの人は花を思い浮かべるでしょう。もちろん花も蜜を出しますが、サクラには花のほかにも蜜を出す場所があります。サクラの葉のつけねのあたりにある小さな粒が、蜜を出す「蜜腺(みつせん)」と呼ばれる場所で、若葉の時期にここからわずかな蜜が出されます。

蜜をなめにやってくるのはアリです。といっても、アリはずっと蜜をなめているわけではなく、枝や葉の上を歩き回りながら、時々、葉の蜜腺に立ち寄るぐらいです。蜜が出される若葉の季節は、葉がまだやわらかく、葉を食べるアオムシなどが葉の上にたくさんいる時期でもあります。アリは葉の上を動き回っている最中に、アオムシやその卵を見つけると、エサとして巣に持ち帰ったりします。

つまり、アリはサクラにとって、葉を食べるやっかいもののアオムシを退治してくれるガードマンのような存在なのです。葉の蜜腺から出る蜜は、アリにパトロールしてもらうためのごほうびなのかもしれません。

サクラの葉の上を歩きまわっているアリを見つけたら、アリの行動をよく観察してみてください。

 

十勝毎日新聞2019年7月掲載(タチモリ)