「はんのきの それでも花の つもりかな」俳句で有名な小林一茶がよんだ句です。
植物の花というと、サクラやヒマワリのように、花びらがあって、色あざやかで、良い香りがして、目立つ花を思いうかべる人が多いでしょう。でも、ハンノキの仲間がつける花は、花びらもなく、色も地味で、香りもしません。これが本当に花なんだろうか?一茶のように不思議に思う人もいるでしょう。
サクラなどが目立つ花をつけるのには理由があります。それは、花粉を運んでくれる虫に来てもらうためです。花の中にごほうびの蜜を用意したり、目立つ色や、花びら、香りなどでアピールして虫をおびき寄せるのです。
一方、ハンノキの花は、虫ではなく風に花粉を運んでもらいます。つまり、虫に来てもらう必要がないので、ごほうびを用意したり、目立せたりしなくてよいのです。そのかわりに、風に乗って花粉が飛んでいきやすいような工夫があります。花粉を出す雄花は枝の先にたれ下がり、風になびきやすい形をしています。そして、葉が開く前で、風をじかに受けられる早春に花粉を飛ばします。目立たない花にも、たくさんの工夫がこらされているのです。
十勝毎日新聞2022年4月掲載(タチモリ)
(写真左)ケヤマハンノキの花(青丸が雄花(おばな)、赤丸が雌花(めばな))
(写真右)風になびく雄花