晩秋~冬にかけて、木の幹に細長いゼリーのようなものがついているのを見ることがあります。一見すると昆虫のフンのようにも見えますが、実はこれはクヌギカメムシの仲間の卵です。
クヌギカメムシの仲間は春から秋まで見られる昆虫で、カシワやミズナラなどの葉から汁を吸って生活します。秋の遅い時期に交尾をしたクヌギカメムシはその後、ゼリーのようなものに包まれた卵を生みます。卵はゼリーに守られて冬をこします。
冬をこしたクヌギカメムシの卵がふ化するのは春の初め、まだ寒く、木々も葉を出す前です。食べ物の少ないこの時期に生まれたクヌギカメムシの幼虫を助けるのが、卵を包んでいたゼリーです。このゼリーには栄養が十分に入っていて、幼虫は生まれてからの数週間、ゼリーだけを食べて育つことができます。
クヌギカメムシの幼虫がわざわざ春の初めの寒い時期に生まれるのは、天敵となる他の昆虫が少ないからだと考えられます。卵を守り、幼虫の餌になるゼリーは、きびしい自然を生き抜くための工夫なのです。
十勝毎日新聞2022年11月掲載(サトウ)