命をつなぐスミレのラッパ

これからの春本番、サクラをはじめさまざまな花が咲く、はなやかな季節がやってきます。目線を下に向けると、地面にも美しい花の世界がひろがっていることが分かります。
足もとでむらさき色に咲くのは、スミレの花です。スミレは、小さくてかれんな姿や美しい色から、人の名前や色の表現にも使われ、昔から親しまれてきた植物です。かわいいスミレの花ですが、次の世代に命をつなぐため、たくみな花のつくりをしています。
スミレの花をじっくりみると、横向きのラッパのようなおもしろい形をしています。花がラッパに似ているのは、5枚の花びらのうち、下がわの1枚の後ろが長く出っぱって筒状になっているからです。
筒にはみつがたまり、虫がみつを吸うためにやってきます。虫がみつを吸うには、筒のおくへもぐりこまなくてはなりません。ラッパのような筒は、虫がもぐりこむと、たくさんの花紛が虫のからだにつくしくみになっています。こうして虫に運ばれる花粉によって、生き残るために必要なたねがつくられていくのです。
さまざまな花が咲く春、足もとにもひろがる植物の世界をのぞいてみてください。

 

十勝毎日新聞掲載2020年4月掲載(ミヤザキ)