ヤナギの木の下で、雪の上に茶色い「から」がたくさん落ちていました。
樹木の芽は、かたいからにつつまれた休眠(きゅうみん)という状態で冬をこします。多くの樹木では、芽がふくらんで花や葉が出てくるのは4~5月ごろですが、ヤナギは冬の間から芽をふくらませ始めます。ヤナギはとても早起きの木なのです。
ヤナギの木で、最初に大きくなるのは花の芽です。まだ寒さが厳しい2月ごろからふくらみ始め、茶色いからがはがれ落ちると、中から毛に包まれた花の芽があらわれます。芽はだんだんと大きくなって4月には花になり、6月のはじめごろの初夏にはタネができます。
ヤナギは河原などの水辺(みずべ)によく生える木です。初夏の河原はというと、雪どけで増えた川の水が減り、ほどよいしめりけが残っていて、ヤナギのタネが芽生えるにはちょうどよいのです。風で運ばれてきたヤナギのタネは、しめった河原に落ちると、すぐに小さな葉を出し、枝を伸ばして成長をはじめます。
ヤナギは、子孫を残すためには、初夏にタネをつけるとよいことを分かっているのでしょう。ヤナギは、大切なタネの季節に向けて、計画的に早起きしているのです。
十勝毎日新聞2023年3月掲載(タチモリ)
【茶色いからがはがれてあらわれたヤナギの花の芽】