まきストーブで使う「まき」を割っていると、中から虫が出てきました。これはキバチというハチの仲間です。なぜキバチは木の中にいたのでしょうか。
キバチの成虫は体長2~3cmくらいで、春~夏に活動します。キバチのメスは長い針のような産卵管を持っていて、弱った木や枯れた木にその産卵管をさして卵を産みます。さらに、キバチの仲間の多くは体内に木を腐らせる菌を飼っていて、卵を産むときにその菌を木に感染させます。卵から生まれたキバチの幼虫は、菌が腐らせて柔らかくなった木を食べながら、1~2年ほどかけて木の中で成長します。やがてさなぎになったキバチは木の中で羽化して成虫になり、外に飛び立ちます。写真のキバチは成虫になったあと、木の中で春が来るのを待っていたのでしょう。
キバチのメスは卵を産んだ後に木から産卵管が抜けず、そのまま死んでしまうこともあるそうです。木に穴を開けてしまうため林業では害虫とされるキバチですが、彼らも必死に生きています。まきにする木がちょっと食べられてしまうくらいは許してあげようと思います。
十勝毎日新聞2021年1月掲載(サトウ)