初夏の森では植物のくきや葉のうらなどに小さな泡がついているのをよく見かけます。そっと泡をよけてみると、中に小さな虫がいるのを見つけることができるでしょう。
泡の中にいるのは、その名も「アワフキムシ」という昆虫の幼虫です。アワフキムシの幼虫は水分の多い植物の汁を吸って生きているので、余分な水分を体の外に出す必要があります。幼虫は体から出た水分を使って石けん水のようなものを作り出し、空気と混ぜて泡立てて丈夫な泡を作ります。この泡は何日も消えずに残り、アワフキムシの幼虫を守ります。石けんと同じ成分でできた泡の中ではアリやクモなどの虫は息ができないので、アワフキムシの幼虫は他の虫に食べられることなく安全にすごすことができるのです。
アワフキムシはセミの仲間で、成虫は小さいセミのような姿をしています。自由に飛び回れる成虫になると泡は出さないので、泡が見られるのは初夏だけです。今しか見られない森の泡を探してみませんか。
十勝毎日新聞掲載2020年7月掲載(サトウ)