虫たちの冬越し

冬のある日、たき火をするために燃やそうとした薪のすきまからハチが出てきました。動かないので死んでいるようにも見えましたが、あたたかい所に置いておくと、もぞもぞと動き出しました。どうやら眠っているだけだったようです。

 このハチはクロスズメバチの一種です。スズメバチの仲間は夏の間は女王バチを中心に巣を作って元気に飛び回りますが、冬をこせるのは次の年に女王バチになるハチだけで、それ以外のハチは死んでしまいます。薪のすきまにいたのは冬をこすために眠っていた女王バチだったのです。

 ハチが出てきたこの薪はもともと外に積んであったもので、そういった場所は虫たちが冬をこすためのいい隠れ家(かくれが)になります。卵や幼虫、さなぎなど、色々な状態で冬をこす虫がいますが、春一番に出てくるのは成虫のまま長い冬をじっとたえた虫たちです。これからあたたかくなれば、春のおとずれをよろこぶように飛び回る虫たちを見ることができるでしょう。

 

十勝毎日新聞2018年4月掲載(サトウ)