白い雪におおわれた森の地面。夏に緑色の葉をつけていた植物は、すべて枯れてなくなってしまったのでしょうか。雪の下の植物の姿をのぞいてみるため、雪をスコップでほってみました。
すると、雪の下から緑の葉が現れました。真ん中から四方にのびた大きな葉には、切れこみのある小さな葉がたくさんならび、まるで鳥の羽のような形をしています。これはシダ植物のひとつ、オシダです。
オシダは緑の葉を残したまま、雪の下で冬をこします。この葉は冬のあいだ、オシダの体に養分を貯めておく役目をもっています。養分は地下の根にも貯められていますが、緑のまま残した葉にも貯められており、雪どけ後のオシダの成長などに役立てられています。「冬の森に緑はない」と思われがちですが、雪の下でも懸命(けんめい)に生きる植物の存在があるのです。
オシダは初夏になると、新しい葉が大きく立派に立ち上がります。クジャクの尾羽のように広がるオシダの葉は、森の緑をいっそう美しく引き立ててくれます。厳しい冬をたくましく生きぬいたオシダに再び会えることを楽しみにして、暖かくなる季節を待ちたいと思います。
十勝毎日新聞2021年3月掲載(ミヤザキ)