サクラの仲間やエゾニワトコの実が赤や黒に色づいてきました。緑が深まった森の中で、色づいたこれらの木の実はよく目立ちます。「実りの秋」というにはまだ早いですが、種類によっては早くも実りの季節を迎えているのです。
赤や紫、黒などに色づく木の実は鳥たちの大好物です。実の外側には糖分などが含まれる果肉(かにく)があって、鳥たちはそれをお目当てに、実を丸飲みします。果肉の部分は体内で消化されるのですが、果肉の中にはかたいタネがあり、それは鳥に食べられても消化されず、やがてそのまま糞と一緒に外に出されます。これが、色づく実をつける木のねらいです。鳥は飛んで移動するので、結果として、タネがあちこちに運ばれることになるのです。おいしい果肉はタネを運んでもらうための、鳥へのごほうびというわけです。
木の実の目立つ色は、鳥に見つけてもらいやすくするためで、熟す前は葉と同じ緑色なので目立たちませんが、熟して食べてもらえる時期になると、赤などの目立つ色に変わります。
これから秋にかけて、順番にいろいろな種類の木の実が熟していきます。色づいた実を食べに鳥がやってくる様子が観察できますよ。
十勝毎日新聞2016年7月掲載(タチモリ)